本の値段が高いと思うんです

高額納税者のむらかみさんへ。
本の値段はなんであんなに高いのでしょうか。読者を一番大切にすると公言しているのなら、もう少し努力してもらいたいです。
例えば、本の値段を一番安く設定した出版社で出すとかはできませんか? 
しがらみがいろいろあるでしょうが、作家一人の自己満足で終わらせないためにも期待しています。読者あっての小説家ですから。
文句があるなら買うな、嫌なら読むな、とは言わないでください。悲しくなるから……。
(コッチートラック、男性、33歳、専門学校勤務)

たとえば小説をひとつ書いて、それを本のかたちにするには、多くの手間がかかっています。本を出したあとで、その本作りに関わった人々に集まってもらうと、けっこうな数になります。編集とか、営業とか、校正とか、デザイナーとか、広告とか、印刷とか、その他いろんな人がそれぞれの持ち場で仕事をしています。「値段を一番安く設定した出版社から本を出せばいい」というのもひとつの案かもしれませんが、丁寧に本を作ることも大事なんです。本というのは作家と出版社が力を合わせてこしらえていくものであって、そこには信頼関係のようなものが必要です。出版というのはただ経済原理だけで成り立っていくものではありません。そのへんのことをご理解ください。

ただ僕としてはできるだけ早く値段の(比較的)安い文庫本を出したいとは思っていますし、そのための努力もしています。親本から文庫まで三年というのはあまりに長いですよね。ただ出版社にも出版社の都合があり、なかなか思うようにいかないこともあります。それからバーゲン本ももっとあっていいだろうと僕は考えています。アメリカの書店なんかに行くと、バーゲン・コーナーがあって、そこではちょっと前に出た本がすごく安く買えます。でも日本では再販制度というものがあり、それがおおっぴらにはできません。

ただこれからは電子書籍が大きな意味を持っていくと思いますし、本の価格の感覚も変わっていくと思います。再販制度もおそらく見直されていくことになるでしょう。そのへんの合意が落ち着くまでには、まだ少し時間がかかると僕は考えていますが。

村上春樹拝