「薬物違反で販売停止」に違和感

村上さんの文章の独特のリズムが大好きです。&作品を読むと、いつもお腹が減ります(サンドイッチがとても美味しそうなので食べたくなる、等)。
さて、最近、私が長年愛してやまないアーティストが薬物使用で逮捕され、とても胸潰れる思いをしました。
村上さんにお伺いしたいのは、それを受けて思ったことについてで(いろいろな意味で薬物の使用はいけない、という大前提のもと)、アーティスト本人とその作品への評価についてです。
私は、たとえ本人が薬物使用で逮捕されたとしても、それまで生み出してきた作品を全て販売停止にする、ひいては、これまでの活動すべてを全否定する、という日本の風潮にとても違和感を覚えます。
あくまで作品は、その時々のアーティストの生み出した産物であって、その産物は本人とは別に切り離されての評価をうけていいと思うのです。村上さんはどう思われますか? 
(羊女、女性、35歳、会社員)

薬物を使用していたアーティストの作品を販売停止にしていたら、ロックにせよジャズにせよ、アメリカの1950年代から70年代にかけてのミュージシャンの作品の大半は、市場から消えてしまうはずです。チャーリー・パーカーだって、スタン・ゲッツだって、ジェリー・マリガンだって、バド・パウエルだって、セロニアス・モンクだって、ビリー・ホリデイだって、みんな麻薬で逮捕されています。マイルズだって、コルトレーンだって、ビル・エヴァンズだって、一時期は麻薬中毒に苦しんでいました。この人たちのレコードが市場からそっくり消えたら、ジャズの歴史はいったいどうなってしまうんですか? 

違法薬物使用は法律に反することですし、個人がその違法行為の法的責任をとるのは当然のことですが、このような「自主的」クリーニングはちょっとやり過ぎだと僕は思います。マスコミの騒ぎ方も異常だと思います。世の中にはもっと大事なことがいっぱいあるだろうに、みたいに思いますよね。

村上春樹拝