書斎より 仕事机からの風景

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書斎便りも、これが最終回です。これが僕の仕事机から見た風景です。窓の外には山が見えます。山って見ていて飽きませんね。多くの人は窓から海が見えるといいって言いますが、僕は山を見ている方が好きです。僕は海のすぐそばにも何度か住んだことがありますが、海って毎日見ているとけっこう飽きるんです。ときどき疲れるし。山は日々その姿を静かに変えていきます。紅葉したり、新緑に彩られたり、雨が降ったり、陽光を浴びたり。飽きません。

スピーカーはJBLのバックロードホーンと、タンノイのバークレイです。JBLはもう40年近く使っているもの、タンノイは数年前に知り合いから譲り受けたものです。どちらも38センチのスピーカーですが、音はずいぶん違います。タンノイはトランジスタで、JBLは真空管で鳴らしています。スピーカーの上に乗っているのは、ロンドンで買った空飛び猫のペアと、ノルウェイのフリーマーケットで買ったシロクマと、ミャンマーで買った木彫りのネズミです。変な組み合わせだけど、とくに意図はありません。朝の早い時間にはタンノイを聴きながら仕事をすることが多いし、正面から音楽を聴くときにはやはりJBLをがつんと鳴らします。

僕にとっての理想の書斎の条件は、大きな長い机があること、大きな音で音楽が聴けること、昼寝のできるソファがあること。その三つです。ときどき音楽を小さな音で聴きながら昼寝をします。ずっとシューベルトの弦楽五重奏曲(ハ長調)で寝ていたんですが、最近はバッハの「フーガの技法」で寝ることが多いです。どちらも睡眠に適した演奏を選んであります。もちろん寝るときにかけるのはCDです。

僕が起きて仕事を始めるのはだいたい朝の四時くらいなので、そのとき外はまだ真っ暗です。熱いコーヒーを飲みながら、机に向かって仕事をしているうちに、空がだんだん白んでいきます。やがて鳥も鳴き始めます。そういう時刻って、なかなか素敵なものです。『風の歌を聴け』を書いたのは千駄ヶ谷の木造アパートの小さな台所の食卓でした。そこからあちこち引っ越しながら、あるいはまた外国を流れ歩きながら、年月をかけてここにたどりついたわけです。長い道のりだった。