父は「集金人」、母は「証人会」でした

はじめまして村上さん。
僕が村上さんの作品に出会ったのは18歳のときで、それは『風の歌を聴け』という本でした。
何もかもが吹き飛んでしまうほどの衝撃を受けてしまい、何日も何日もその本を繰り返し読んだ事をよく覚えています。
それからずっと村上さんのファンです。
村上さんに少し聞いて頂きたい話があります。
僕の母親は『1Q84』に出てくる証人会のモデルとなっているだろう宗教団体に入信しています。僕も中学生の時まで一緒に教会に行ってました。
父親の職業はNHKの集金人で、担当してた地区では集金率が1位でした。
『1Q84』を読んだ時「こんな事あるんだ」と、とてもビックリしたのと同時に、読んでいて小さい頃を思い出し、少し悲しい気持ちになりました。
父親がNHKの集金人だったせいでとても苦労したという事は特にありませんでしたが、宗教の方では何かと辛い経験もあったので。
たぶん僕と同じように、母親は証人会、父親はNHKの集金人なんて境遇の人はいっぱいいるかもしれないのですが……。
と、ここまでは書いたんですが、これに続く言葉が何日経っても出てきません。
それがどうしたんじゃい! 的な話をしてしまってすみません。
僕自身も文章を読み返すと本当にそう思います。
今後も村上さんの作品を楽しみにしています! 
( L.A.WOMAN、男性、29歳、ミュージシャン)

そうですか。そんな偶然がちゃんとあるんだ。たしかに本を読んでいてびっくりしちゃいますよね。

僕はあの本を書いたとき、「証人会」(みたいなところ)やNHKから抗議がくるんじゃないかと心配していたんですが、とくにそういうこともなく(少しはありましたが)平和裏におわってほっとしました。というかむしろ、「証人会」(みたいなところ)から抜け出して、現実の社会に溶け込むのに苦労したという人たちからたくさんの「共感」のお手紙をいただきました。青豆さんと同じような体験をしている人って、思っていたよりずっとたくさんいらっしゃるんですね。そのことに驚かされました。

いいですよ、べつに、結論が出なくても。自由に書きたいことを書いてきてくれれば、それでいいです。これからも僕の本を読んでくれると嬉しいです。

村上春樹拝