「ピーター・キャット」のファンでした

こんにちは村上さん。
私は中高生のころ千駄ヶ谷に住んでいて、村上さんのお店peter-catによく伺っていました。コンビーフサンドがお気に入りでした。あとラムコークも(時効ですよね)。
混んでいても人がいなくても、音楽が流れていてもそうでなくても、何かその場の空気感が好きだったのです。この店がある限り、ここに住んでいたいな、なんて思っていたくらいです。
その後、お店を手放されたのだと思うのですが、次も内装そのままで同じような業態のお店が営業していました。でも、なんだか全く違う、のっぺらぼうな感じのものになってしまっていました。何が違うのでしょう。同じ内装、同じロケーションなのに。不思議でした……。場を作るものってなんなんだろう。
今私は、建築設計の仕事をしていて、頭の中で思い描いたものを、図面に表現して、空間を作っています。でもpeter-catのことを思うと、空間は形だけでは決まらない、と、ある意味自分の職能を否定するような思いを抱いてしまいます。
それを作るのは人だよ、なんてこともよく言われます。
そういう場合も多い、でもそれだけでもない気もするのです。
村上さんはどう思われますか? 
(環、女性、50歳、建築設計)

店を経営するのも、本を書くのも、基本的には同じことなんだろうと僕は考えています。自分が納得できるものを、細部まできちんと磨き上げてつくっていって、そこに人を迎え入れ、もし気に入ったらまた来てくださいね、ということになります。容れ物はとても大事です。でもそれと同時に、そこに入れていくものも、容れ物と同じくらい大事です。僕は店を経営することによって、数多くの大切なことを学びました。ずいぶん昔のことになりますが、僕の店が気に入っていただけたようで、とても嬉しいです。

建築設計に関していつも思うことなんですが、日本の建築家はだいたいにおいて照明が下手ですね。デザインのうまい人でも、名のある人でも、照明に関しては満足できないところが多いように思います。どうしてかな? 照明ってすごく大事だと思うんだけど。

村上春樹拝