か*しま先生に感謝!

村上さん、こんにちは。
中学生のときの教育実習の先生に『ノルウェイの森』をいただき、それ以来の読者です。
先生の家に皆で遊びに行ったら、本屋でずっと気になっていた赤と緑の美しい装丁の本が本棚にあり、何の気無しに読みたいのだと話したら、その数ヶ月後、父の仕事で外国へいくことになった私に、餞別にくれました。
中学生からみても未熟なところのある若い男の先生だったので、あの年代の女子は無敵ですから、それはもう散々にからかっていじめました(陰湿なイジメではなく、愛あるからかい)。そんな中学生の小娘にあの本をくれた彼の器の大きさに後になって驚いたものです。きっといい先生になっているんだろうなー。
時折、高校生の娘さんや息子さんに村上さんの本を読ませるべきか迷われてる方もいらっしゃるみたいですが、男と女のことも、人生も全然わかってない中学生でしたが、色々なことを受け取ったし、読み終わった後、この本をもらえたということは1人の人間として認めてもらったようで嬉しかった。後から分ったことももちろんたくさんありますが、大人が思うよりずっと、子供は色んなことをわかっています。
……何が話したかったのかというと、こんなに長く続いている春樹さんとの出会いをくれた、か*しま先生に感謝!するとともに、私もそんな大人でありたいということです。なれているかな? 
(パクチーの囁き、女性、42歳、研究職)

そうですね。僕も十代の初めから実にいろんな本を片端から読んできて、もちろんまだ子供みたいなものだから、よく理解できないところもたくさんあったはずなんだけど、でもあとになってみると、本の大事な内容はけっこうちゃんと読み取っていたんだなと自分でも感心したりします。作品の全体像を空気そのものとして、身体にしっかり取り入れることができてたんだ、と。

『ノルウェイの森』が出た頃は、セックス描写が過剰だというようなことを、世間でよく言われました。青少年に良くない影響を与えるみたいに。それで多くの人々の反感を買ったりもしました。セックス描写はたしかにありますが、でもそれはあの本のほんの一部の要素に過ぎません。そしてそれは、小説にとってどうしても必要な描写だったんです。どうしてそのことがわからないんだろう、と僕はよく不思議に思ったものです。でも中学生時代のあなたに喜んでいただけたみたいで、僕としてはとても嬉しいです。

村上春樹拝