世の中、優れた猫ばかりじゃないですよ

こんにちは。
僕も下の名前がハルキなんです。
まあそれはいいとして、村上さんは所謂文才についての質問に対する答えとして、才能ありきだとお答えなさっておりました。
また、書きたいから小説を書くのだといった趣旨のことも拝読させて頂きましたが、そこで質問です。
もしも、小説を書きたくてたまらない村上さんには、才能がまるでなく、とても作家としてはやっていけない……といった境涯に置かれたとしたら、当時の村上さんはどのような行動を起こしたのでしょうか。やはりジャズ喫茶へと帰っていったのでしょうか。
村上さんは、あくまでも自然体で過ごしておられるようだし、事実猫のように伸びやかに見受けられます。
ただ、世の中優れた猫だけがいるわけではないと思いましたので、少し困らせるような質問をしたくなったのです。
よろしければ、こんな失礼な質問にお答えください。
(敷間、男性、19歳、大学生)

いえいえ、別に失礼な質問なんかじゃありませんよ。何でも訊いてください。

僕は才能があったから小説を書いたわけではなく、ただ書きたいと思ったから書いただけです。自分に才能があるかないかなんて、特殊な人を別にすれば、そんなこと最初のうちは誰にもわかりません。僕は書かずにいられなかったから小説を書いて、それが新人賞をとって本になり、たまたま多くの人の気に入られたというだけです(もちろん気に入らないという人もたくさんいますが)。そしてあとから振り返って考えて「うーん、じゃあ、少しは才能があったのかもな」と思っただけです。

もし才能がなかったら? もちろん小説家になんてなってないし、ずっとジャズの店をやっていたと思いますよ。もともと小説家になりたいと思っていたわけでもないし、店をやるのはなかなか楽しかったし、音楽を聴いているのは好きだし、それなりに満足して人生を送っていたと思います。実を言えば、明日からまたジャズ・クラブのオーナーになってもいいかなと思っているんですが。

村上春樹拝