「象の消滅」はアメリカでの評価が高い?

村上さん、はじめまして。
私は、高校生まで読書や国語というものに全く興味がなかったのですが、大学生のときに、先輩から『ノルウェイの森』を薦められ、その面白さに衝撃を受け、それ以来、活字に対する苦手意識がなくなり、村上さんの他の作品は勿論、多くの作家の作品を貪るように読むようになりました。読書という素晴らしい体験を趣味の一つに加えられたことは村上さんのおかげだと思っています。ありがとうございます。
さて、お伺いしたいことがあります。私は村上さんの作品で、長編では『羊をめぐる冒険』が、短編では「象の消滅」が好きなんですが、私の周りの村上さんのファンで「象の消滅」が好きな人はほとんどいません。好みの違いかと思っていたところ、この作品はアメリカで出版された短編集の表題になっていることを知って驚きました。「象の消滅」が表題作になったのは何故でしょうか? アメリカでの評価が高いからでしょうか? 教えていただけるとありがたいです。長くなって申し訳ありません。
(ラスコーリニコフ、男性、35歳、教員)

どうして「象の消滅」が表題作になったのか? 正直言ってよく覚えていないんですが、たぶんアメリカの編集者がそれを選んだのだと思います。それまでに僕の短編小説がいくつか(一ダースくらい)アメリカの雑誌(ほとんど「ニューヨーカー」)に掲載され、それを中心に短編小説集が編まれたのですが、「象の消滅」もその中のひとつで、担当編集者(ゲイリー・フィスケットジョン)がそれを気に入って表題作にしたということだったと思います。これはKnopfが最初に出した僕の本でした。今からもう20年以上前のことです。

最初はあまり売れなかったんですが、20年間じわじわと売れ続けて部数も伸び、総計するとずいぶんたくさんの人の手に取られたみたいです。アメリカ版とまったく同じ内容、オリジナル・ハードカバーの装丁(チップ・キッド)を継承したデザインで、新潮社から出版されています。僕もこの本は気に入っています。

村上春樹拝