村上さん、小骨をとってください

村上さんの著書は新刊ではもちろん、携帯用に文庫本、装丁に魅かれてつい全集でも購入してしまいます。こんなちょっとした贅沢ができるのが、大人になって良かったところでもあります。

ところで……小学生の時に先生に言われた「口に出す前に、それが言うべき価値があることかを考えなさい」と言う教えが今でも魚の小骨のように喉に引っかかっていて、言葉を飲み込んでしまう癖があります。幼い私には結構インパクトがあって、それから暫くうまく口がきけなくなったのを覚えています。
「言うべき価値があるか、ないか」で言ったら他愛のないお喋りに大概価値なんてないですよね。そんな事考えないで、楽しく雑談したいのです。先生に他意がなかったのはよく分かっていますが……。

村上さんに小骨をとってもらえると本当に嬉しいです。
(お魚くわえた猫、女性、52歳、自営業)

「これから言おうとしていることに、言うべき価値があるかどうか」、これはむずかしい問いかけですね。そんなことをいちいち考え出したら、ほとんど何も言えなくなってしまいそうです。そういう観点から見れば、僕が普段口にすることなんて、だいたい言わなくてもいいようなことばかりかもしれません。ずいぶん適当なことを言ってるからなあ。

でも僕は思うんですが、もしそれが人を傷つけないのであれば、たいていのことは口にしちゃっていいんじゃないかな。人を傷つけないようにするというだけでも、相当たいへんな作業ですよね。それ以上のことを考え始めると、頭がフリーズしてきます。もっと気楽に生きていけばいいですよ、たぶん。

村上春樹拝