息を吐くように嘘をつく女

村上さん、こんにちは。メールへのご回答、お疲れさまです。
突然ですが、村上さんは平気で嘘をつく人物に出会ったことはおありでしょうか。
私の同僚は人当たりもよく誰からも好かれる人物ですが、おそらく病的な虚言癖があります。気づいた時には、私は孤立させられていました。彼女の異常さを見抜けなかった自分、彼女の話を疑いもせずに信じる上司、そして息を吐くように嘘をつく彼女。正直、何を信じたら良いのか分からなくなる時があります。くじけそうになりますが、きっと一番不幸なのは嘘をついた当人なのだと思い、何とか自分を保っている状況です。
『ノルウェイの森』でレイコさんが遭遇した少女、「沈黙」に出てくる青木という生徒がとてもリアルに感じられると同時に、それぞれの物語は私にとってある種の救いにもなっています。
どうぞ、これからもお体を大切に。じんわりと「効く」作品を心待ちにしています。
(blue carol、女性、39歳)

よくわかります。僕もそういう人に関わって、困った目にあわされたことが何度かあります。虚言癖というのは多くの場合完全な病気なんだけど、なかなかまわりの人にはそれが見抜けません。本人がそれを嘘だとは思っていないし、話を実に芸術的に本物らしくしていくからです。そういう人たちって弁が立つから、あるいは不思議に説得力があるから、そこにある矛盾も普通の人にはなかなか見抜けません。みんなころっと騙されてしまいます。

でもそれなりの時間が経過すると、みんなちょっとずつ「なんか変だな」と思うようになります。そうするとその人はだんだん孤立していきます。とにかく時間をかけるしかありません。大変でしょうが、「きっと時間が解決してくれる」という気持ちで耐えて、やり過ごしてください。

村上春樹拝