猫と仮病と夜明けの生イカ

ボンジュール村上さん。
我が家の猫たちの話です。ねこじゃらしジャンプ遊びで着地に失敗し、猫の命ともいえる肉球が割れるという怪我を負い連日通院していたある日、獣医さんに「もう来なくて大丈夫です。きっと飼い主さんが見ていないところでは普通に歩いてますよ」と言われました。また、もう一匹の猫は、ある日突然飲まず食わずでぐったりとなり、あわてて病院へ駆け込むも数々の検査結果は良好。年齢のわりに歯がキレイですねと褒められるほどでした。何か最近変わったことはなかったかと聞かれ、「おしっこ癖が悪いので、このコいなくなったら楽になるねと軽口をたたいたぐらいですかねぇ」とジョークのつもりで答えたところ、「あ。それだ。傷ついたんですね。かわいそうに」とドクターや看護師に冷たい目で見られてしまいました。そうです。みんなそれぞれ仮病だったんです。それ以来、我が家では夫婦して猫たちに失言しないよう細心の注意を払いながら生活しています。うわさ話をする時は暗号を使って会話をしています。以前、村上さんが、手を握っててやらないとお産ができない猫を飼っていたとおっしゃっていましたが、今の私にはわかります。それも仮病というか、ただのポーズだったんですよ。猫ってそういう奴らなんです。
(Garp、女性、46歳、飲食業)

僕が国分寺に住んでいたとき、水道屋さんのおじさん(昔は井戸掘りをしていた)から聞いた話です。ある冬の夜、寝る前に夫婦で「おいしいイカが食べたいねえ」と話をしていたんだけど、翌朝起きたら枕元に猫の歯形のついた生のイカが置いてあったそうです。飼い猫が夫婦の話を聞いて、夜の間にイカをどこかから持ってきてくれたんですね。猫、すごいです。うかつな話はできません。しかしどこからイカを持ってきたのでしょうね。猫の謎は深いです。

村上春樹拝