機械設計技術者一年生の深い悩み

こんにちは。いつも楽しく作品を読んでいます。

僕は工学系の大学院を出て、機械設計の技術者として働き始めて一年になります。
学生時代は、工学部ながら実社会には役に立たない少し変な研究をしていて、とても楽しくやっていました。このままずっと研究できたらとも思ったのですが、優秀な人々を見るにつれ自分の才能の限界を感じ、また食っていかねばとも思い、研究者はあきらめ、全く関係ない分野に就職しました(たまたま就職できたので)。
しかし、ある程度の覚悟をもって就職したつもりなのですが、結局ほとんど仕事に興味を持てず、一生その仕事をしていくことを思うと、とても暗い気持ちになります。
一方で働き始めてから、つまらない仕事やきつい仕事でも文句をいわず擦り切れるほど働いている人をたくさん見て、そういう人たちのおかげで世の中上手く回っていることも身に染みてわかります。
やはり大学出てまともに仕事につけただけでも幸せと思い観念するしかないのでしょうか。
それとも人生一度きりなのだから、才能のことは考えずに、やりたい仕事を石にかじりついてでもすべきなのでしょうか。

多崎つくる君のように好きなことを仕事にできたらよかったのですが。

よくある甘ったれた若者の悩みで申し訳ありません。こういう悩みに対して、村上さんならどう思うのか想像がつかなかったので質問してみました。

これからも新作を楽しみにしています! 
(アムッド1号、男性、25歳、機械系エンジニア)

僕は工学系の仕事のことってよくわからないんです。また会社のこともよくわかりません。だからあなたの質問に答える資格はほとんどないような気もします。

でも僕は一人の小説家として思うんですが、トンカチ仕事って大事ですよ。僕は文章を書いては、こつこつとトンカチ仕事をして、それを少しでも精度の高いものにしていきます。それはすごく地味な、根気のいる仕事です。でもそういう仕事がしっかりできなければ、小説ってまず書けません。書けたとしてもろくな作品にはなりません。

僕が言いたいのは、たとえどんなことであっても、どんなにつまらなそうに見える作業であっても、ものごとの精度を高めていくのは意味のあることだということです。あなたの今やっている仕事の精度を高めることは可能ですか? もし可能だったら、とりあえず努力して少しでも高めてみれば? そこには何かしらの意味があるはずです。そこからまた話は前に進んでいくと思いますが。

村上春樹拝