贅沢だけど切実な悩みです

はじめまして、村上さんの高校の後輩です。
中学までは優等生だったのですが、高校で落ちこぼれ二流大学を経て父の会社を手伝い始めました。従業員数名の小さな会社です。自分には経営の才能なんてないと思っていたので、とにかく必死で働きました。家族も大事にしてきました。子供たちの勉強を毎日見て、家族旅行にも年に数回行きます。
30代前半で父から事業承継して15年以上社長業をしてきました。その間浮き沈みはありましたが、意外にも商才があったのか気がつけば贅沢しなければ一生苦労しないほどのお金を稼ぐことができました。子供たちもとてもいい子に育っています。
昨年父が他界しました。その頃から仕事への情熱が冷めてきました。もともと稼業だっただけで、その仕事自体は好きではなかったし、本来内向的な性格なので、社長としてのキャラも無理して作ってきました。
もうすぐ50歳になり、子供たちもいずれ巣立っていくでしょう。この先どんな風に生きて行ったらいいのか最近不安になります。ずっと仕事と家庭を優先してきたので趣味はほとんどありません。読書はもちろん村上さんの小説は大好きですが、ちょっと難しい本にチャレンジすると途中で分からなくなってしまいます。映画は好きですが、あっという間に内容を忘れてしまいます。スポーツも好きな方ですが、体が硬いせいかすぐに故障してしまいます。芸術的才能はゼロです。衣食住へのこだわりも全くありあません。
こんな私が50歳からの人生を謳歌するにはどうすればいいのでしょうか。アドバイスいただけないでしょうか。贅沢な悩みと言えばそれまでなのですが。
(イヤーオブザシープ、男性、47歳、会社経営)

はじめまして。他のかたのメールにも書いたばかりなんですが、あなたのケースもやはり「ミッドライフ・クライシス」だと思います。中年期にさしかかり、現実的には何ひとつ不足はないんだけど、なんだかやる気がなくなってきて、人生の風景が空しく思えてくる。それは普通にあることです。もうすぐ(もしまだだとしたら)「五十肩」を体験されることと思います。「五十肩」はきついですよ。肩が痛くてうまく眠れません。「ミッドライフ・クライシス」のひとつの典型的な徴候です。

どうすればいいか? しばらくはただ耐えるしかありません。症状としては女性の更年期に似ているかもしれません。あなたの身体は、老いることへの順応を求められているんです。かなりきつい時期です。でもそれを通過すれば、また少し楽になります。できれば何か趣味をみつけましょう。趣味はないということですが、探せばきっと何かあります。探してみてください。何か新しいことを始めるのが大事です。

村上春樹拝