そろそろ自分の文体を確立したい

曲がりなりにも文筆家の見習いとして文章を書いている者ですが、小説家にしろ、美術家にしろ、評論家にしろ、映画の字幕にしろ、好きな書き手や文体が見つかるたびに影響を受け、無意識に真似してしまうのか、それが文章にも出てしまいます。そろそろ自分の文体と言うものを確立したいのですが、村上さん、どうしたらよいでしょう? 村上さんが、自分の文体を確立できたと思ったのは、何歳くらいのときですか。
(匿名希望、男性、26歳)

もちろん人によって差はありますが、26歳というのはまだまだ流動的な時代です。いろんな人の影響を吸い込みながら成長していく年齢です(もちろん若くして――たとえば20歳前後で――完成された天才は別ですが)。真似をするのはある程度当たり前のことです。気にすることはありません。そのうちに自然に自分の文体ができあがっていきます。

僕の場合は、30歳で小説家としてデビューしました。決して早いデビューではありません。でもそのときには(それが小説を書いた最初だったのですが)、自分の基本的な文体のようなものはできていたと思います。あとはそれをちょっとずつ発展させていっただけです。どうやってその文体を見つけたのか? たぶん生きることによってです。文体というのは結局は生き方なのです。

村上春樹拝