村上さんの文章のグルーヴ感

昔から思っていることなのですが、村上さんの文章は読んでいて不思議なくらい、スッと頭の中に入ってきます。ただただシンプルに大変気持ちいいのです。意味を超えたレベルで。文章のグルーヴ(ちょっと恥ずかしい表現ですが)が他の作家さんと決定的に違うように思います。そして、これは村上さんが音楽マニアであることと密接に関係している、と勝手に解釈しているのですが、村上さんご自身はどのようにお考えでしょうか? 私もどっぷりと音楽に浸かりながら生きてきたので、この推測が当たっているといいなと思いながら、質問させていただきます。
(Y.O、男性、35歳)

そうですね。僕の文章にとって、音楽の影響はとても大きいように思います。文章を読み返しながら、リズムや響きや流れみたいなものをいつも頭の中で点検しています。声に出し読んでみることもたまにあります。文章の書き方について、僕は多くのことを音楽から学んだかもしれません。

僕が音楽性を感じる文章を書く人としては、ポール・オースターがいます。ただ彼の音楽性は僕のそれとはずいぶん違います。彼の奏でる音楽はとても構築的で、バッハのフーガなんかに通じるところがあります。対位法的に整ったところがあって、読んでいて気持ちがいいです。僕の場合は「構築的」というのではないですね。フリー・インプロビゼーションの方に近いかもしれません。楽器はたぶんピアノだと思います。

村上春樹拝