30年前の選評

もう30年前ですが、村上春樹さんの『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』が谷崎賞を受賞された際、5名の銓衡委員のうち、丹羽文雄・丸谷才一両氏を除く3名が、選評で以下のような、ほぼ同内容と思われる指摘をしました。

遠藤周作「二つの並行した物語の作品人物(たとえば女性)がまったく同型であって、対比もしくは対立がない、したがって二つの物語をなぜ並行させたのか、私にはまったくわからない」

吉行淳之介「この二つの世界は、描かれている文体は違うが味わいは似通っている」

大江健三郎「僕ならば片方は現実臭の強いものとして、両者のちがいをくっきりさせると思います。しかし村上氏は、パステル・カラーで描いた二枚のセルロイドの絵をかさねるようにして、微妙な気分をかもしだそうとした」

村上さんはこの後も『海辺のカフカ』や『1Q84』において、いわゆる「パラレル・ワールド」を採用されています。それはもちろん村上さん独自の文学および文体に対する自覚的かつ方法的な意図や目的による結果であると拝察致しますが、上記の指摘に対し現在あるいは当時の村上さんの率直なご意見やご感想があれば是非お聞かせ下さい。

また、2015年1月現在、大江健三郎さん以外は故人となりました。当時、授賞式にて銓衡委員の方々と交わされた会話、印象に残るエピソードがあれば併せてお聞かせ下さい。この貴重な機会に伺えれば幸いです。
(ヒースクリフ、男性、32歳、教育)

今読み返すと、ちょっと不思議な気がしますね。時代が確実にひとつ違っているかなあ、という感にも打たれます。あなたはどのようにお感じになりましたか? 僕は当事者なので、ちょっと意見が言いにくいです。

村上春樹拝