娘の兄弟姉妹は19人

村上さん、こんにちは。うちの4歳の娘は一人っ子ですが、数ヶ月前から架空の兄弟姉妹の話を始め、今日でもう19人も兄弟がいることがわかりました。みんな毎日魚釣りに行ったり、おいしいものを食べたり、たまに病気になったり、歯医者になったり、住んでいるお家も様々で、とても面白いのでついじっくり話を聞いてしまうのですが、ふとこのまま楽しんでいてよいのか、と自問しました。どうでしょう? 彼女の話を分析するべきでしょうか? 
(ふかひれ、女性、40歳)

とても面白い娘さんをお持ちです。それは退屈しないでしょう? 兄弟が何人まで増えていくのか、ぜひ確かめてください。話を分析する必要なんてありません。ただただ熱心に聴いてあげてください。彼女と世界をしっかり共有することが大事です。そういう自由奔放なイマジネーションを、僕は「パフ・ザ・マジック・ドラゴン」と呼んでいます。

子供がお話を作るのは、むしろ現実を把握するための大事な、そして自然な作業なのです。ポール・オースターはこのように書いています。「夜に夢を見ることができなければ人は発狂してしまうという。同じように、子供が想像の世界に入ることを禁じられてしまったら、いつまで経っても現実世界を把握できないだろう」(『孤独の発明』柴田元幸訳・新潮社)。「パフ・ザ・マジック・ドラゴン」を殺してしまわないように、大事にまもってあげてください。

村上春樹拝