ザ・ベスト・オブ “All the Things You Are”

村上さん、こんばんは。
私が一番最初に(四半世紀くらい前のことです)好きになったスタンダードは“All the Things You Are”で邦題『鬼才トリスターノ』(Atlantic)に収録されていたものでした。
以来、いろんな“All the Things You Are”やそのヴァリエーション(ソニー・ロリンズにポール・ブレイが挑戦したものやパット・メセニーのトリオ、ヤンシー・キョロシーのハチャメチャな演奏等々)を数々聴いてきて、今は、ウォーン・マーシュの「Noteworthy」に「Duet」として収められた演奏とビル・エヴァンズの『At Shelly's Manne-Hole』(Riverside,1963のCD盤に追加された)の演奏が一番深く心に沁みるな、と感じています。
村上さんにとって印象に残る“All the Things You Are”は誰のどの演奏でしょう? 
もしくは村上さんのお好きな、あるいは印象深いと思われるジャズ・スタンダードはどういったものでしょうか(私は、いろいろもちろんありますが、たまたま昨日耳にした「Invitation」を今回はあげてみます。変わった出だしですよね、この曲って……。ほか「So in Love」も渋いなぁ)。
(暗頭明、男性、45歳)

こんにちは。僕にとっての“All the Things You Are” はなんといっても「Art Tatum & Ben Webster Quartet」(Verve)にとどめを刺します。極端なことを言えば、これさえあればあとはいらないというくらいのものです。ボーカルだと、ちょっと古いですが、ミルドレッド・ベイリーの名唱が頭に浮かびます。ノンビブラートの独特の声が、この曲の骨格をすごくストレートに浮き彫りにしています。ピアノ・トリオではなんといっても、ハンプトン・ホウズの「The Trio」(Contemporary)の演奏が素晴らしいです。きりっとした吟醸酒みたいな音楽です。まだお聴きになっていなかったら、聴いてみてください。

村上春樹拝