校正者の細かい「つっこみ」をどう思う?

村上さん、こんにちは。出版社で校正の仕事をしています。
私の担当している文芸誌では、単純な誤字脱字や事実関係の誤認を指摘する以外にも、「この人物は右利きのはずですが、左手でサインをしています」とか、「携帯電話が出てきますが、この地代にはまだ発売されていないはずです」とか、内容についての細かい「つっこみ」を入れることも校正の仕事のひとつとされています。小説家から見て、そういう「つっこみ」ってどうなんでしょうか。「ちっ、いちいちうるっせーな」と思われたりしないか、いつも心配です。
(もぐらさとこ、女性、37歳、校正者)

うるさいなんて思ったことはありませんよ。そういうのはとても大事な指摘です。僕はいつも校正の人に感謝しています。どんどん指摘してください。本というのはいったん世の中に出てしまうと、なかなか訂正がききません。その前にしっかりとネジを締めるのは大事なことです。新潮社の校閲はとくにしっかりしていて、ゲラが真っ黒になって戻ってきます。ありがたいことですね。

ところで、質問文の中にある「この地代には」じゃなくて「この時代には」の間違いですよね。校正者の間違いを指摘するのは作家にとって無情の……じゃなくて無上の喜びです。

村上春樹拝