まずまず、の精神で

村上さん、はじめまして。デビュー作の頃から村上さんの著作はいつも楽しみに読んでいます。
突然ですが私、2年ほど前にパーキンソン病と宣告されてしまいました。診断を告げられた時は頭が真っ白になりましたが、今では効果的な薬もいろいろあり、普通に天寿を全うできるようになってきていると知り、自分なりに病気を受け入れようと思えるようになりました。
でも私の場合は症状の進行が早く、今では体を動かすのももどかしいほど緩慢になり、歩く時もゆっくりゆっくりバランスをとりながら……といった状態です。今まで当たり前にできていたことがひとつずつできなくなっていく中で、時々ものすごく不安になってしまいます。
病院においてあったパーキンソン病についてのパンフに「日常生活では、できるだけリラックスして『あわてず、あせらず、あきらめず』を心がけましょう」という言葉があったので、体が言うことをきいてくれない時はその「あわてず、あせらず、あきらめず」という言葉をハミングしつつ何とか平常心を保っています。でもそれも最近だんだん効力がなくなってきたようで……。
そこで村上さんに相談、というかお願いなんですが、こんな私に「あわてず、あせらず、あきらめず」に次ぐ第二のフレーズを作っていただけたらうれしいのですが(ちなみに、わがままですが「それがどうした、そんなもんだ」以外でお願いできますか)。
(フラニー、女性、58歳、無職)

闘病生活、たいへんだと思いますが、がんばってください。こういうときには「がんばってください」と言ってはいけないというのが最近の風潮ですが、僕は「もしがんばれたらがんばってくださいね」というニュアンスで言っています。ご理解ください。

うーん、「あわてず、あせらず、あきらめず」のかわりになる言葉? どんなものがあなたのお役に立つのか、僕にはよくわかりませんが、たとえば、

「右よし、左よし。前はまずまず、うしろもまずまず」

という指さし点呼をなさってはいかがでしょう。根拠はあまりありませんが、ふと思いついたので。まずまず、の精神で前に進んでいってください。

村上春樹拝