ビリー・ジョエルが好きな中学二年女子より

クラスの人には本や音楽の趣味を理解してもらえない中二女子です。
ビリー・ジョエルの「Honesty」って素敵な音楽だなと思います。この曲の歌詞は、私の思っていることを正確に表していると思うのです。私は、信用できる人なんて誰もいないと分かっています。でもなぜか、ある女の人を信頼しています。
多くの人はこの曲をラブソングと解釈するようですが、そのことに違和感を覚えます。私がこの曲で思い浮かべるのはその女の人ですが、彼女に恋している訳ではありません。村上さんは、この曲をラブソングだと思いますか? 
そしてもう一つ、『ノルウェイの森』の第一章で流れる「ビリー・ジョエルの曲」は、もしかして「Honesty」ではありませんか? それとも他の曲を思い浮かべて書かれたのですか? 
(まりな、女性、14歳、中学生)

すみませんが、今たまたま手元に「Honesty」がなくて、歌詞もわかりません。どんな歌詞でしたっけね。うちに帰ればあると思うんだけど、ちょっと急には帰れなくて。

『ノルウェイの森』の第一章で、ビリー・ジョエルの歌が流れていた。そうだっけ? ちょっと思い出せません。いろんなことをどんどん忘れていきます。それはともかく、僕はビリー・ジョエルのアルバムでは「ナイロン・カーテン」がわりに好きです。「アレンタウン」が出てくる短い小説をどこかで書いた記憶があります。プールを泳ぐ男の話。なんだっけな? これも思い出せません。まるでざるで水をすくっているような人生です。

そういえばこのあいだ、NYタイムズにビリー・ジョエルの近況記事が載っていました。奥さんと離婚して、アルコール依存症になって、仕事もうまくいかなくて、鬱気味になっていたけど、やっと回復して、今度マディソン・スクエア・ガーデンでコンサートを開くんだという話でした。ジョエルさんもいろいろと大変だったんだ。

村上春樹拝