ジャズ本の翻訳で苦労すること

ジャズに関する本の翻訳をしたいと思っています。村上さんは多数されてますが、翻訳をする上で念頭に置いていることは何ですか? 
(匿名希望、女性、34歳、会社員)

僕がジャズの本を翻訳するときにいちばん考え込んでしまうのは、人称の問題です。たとえばセロニアス・モンクが何かを語るとき、「おれ」なのか「私」なのか「ぼく」なのか(ぼくはちょっとないですよね)、迷います。「きみ」「おまえ」「あんた」「あなた」も迷います。デューク・エリントンはたぶん「私」でしょうね。マイルズは「おれ」かなあ。コルトレーンは「おいどん」ですね……というのはもちろん冗談ですが。

村上春樹拝