殺害方法が「二番煎じ」のような……

文学を解さない無粋な男が、ノーベル文学賞を受賞するのではないかという作家に対し、僭越だということは十分承知の上で、どうしても村上さんにお尋ねしたいことがあります。『1Q84』の青豆が殺人を犯す、その殺害方法ですが、私の記憶が正しければ、テレビ時代劇の『必殺仕掛人』で緒形拳が扮する鍼灸師が行う殺害方法と同じです。「二番煎じ」の感が否めません。私は村上春樹ならではのユニークな殺害方法を考案していただきたかったと思うのですが、作者ご自身のお考えをお聞かせいただければこれに勝る喜びはありません。
(牧村 拓、男性、57歳、会社員)

そういうことをときどき言われるのですが、僕はテレビをほとんど見ないので、『必殺仕掛人』のことはよく知りませんでした。どこかの雑誌で、そのような完全殺人(細い針で形跡を残さずに、クビの後ろの特殊な一点を刺す)も可能だと書かれているのを読んで、それにインスパイアされて青豆の殺人方法を思いついたと記憶しています。細部の手順は自分で考えました。

それから、これは前にも書きましたが、『海辺のカフカ』で魚が降ってくるシーンは、映画『マグノリア』で蛙が降ってくるのと同じじゃないかと言われたこともあります。でも僕は『海辺のカフカ』を、その映画を見るよりも先に書いています。

そのように何かがたまたま似てしまうことって、わりによくあるんです。人間の考えつくことって、わりに限られていますから。どっちが先かということよりは、それがその作品の中で必然性をもっているかどうかということがむしろ大事なのではあるまいかと、僕は考えているのですが。

村上春樹拝