最期を看取った『ノルウェイの森』

職業柄、いろいろな人の最期に立ち会います。先日もある60代の男性患者さんとお別れしたばかりです。
その人は声の低い素敵な男性で、病室に行く度、いつも『ノルウェイの森』を読んでおられました。どっちかと言うと、「下」の方をよく読んでおられたと思います。
その人は自分の余命を、しっかりと理解しておられました。「後悔ばかりで眠れないなあ」と、明け方まで起きておられたこともあります。
最後の最後まで、彼のそばには『ノルウエイの森』が置いてありました。あんなに人がたくさん死ぬ話の、どんなところが彼を救っていたのかわからないような、でもよくわかるような気がします。
村上さんの本が、こんな風にも読まれていることをぜひ伝えたくて、書かせてもらいました。
ちなみに、神戸のチャリティで、村上さんの冷たい手で握手していただいた者です。村上さんが冷え性じゃなくって、ほっとしています。絶対長生きしてくださいね。
(りんりん、女性、40歳、看護師)

神戸で握手した方ですね。お仕事、いろいろたいへんだと思いますが、これからも多くの人を助けてあげてください。僕もそのうちに助けてもらうことになるかもしれませんが。

そんな風に僕の本が読まれているというのは、とてもありがたいことです。そうですね。あの本ではたくさんの人が死んでいきます。そして主人公の「僕」は生き残っていきます。そして生き残ることの責任を引き受けていきます。僕もできるだけ長生きをして、僕なりの責任を引き受けていこうと思います。

村上春樹拝