作家は自分の作品に変化を要求しているのですね

こんにちは。
私は中国の編集者・小説家です。売れる作家とは言えないですが(笑)。
16歳で村上さんの『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』に出会って以来、大ファンになりました。それは1990年代、中国のムラカミブームはまだ成形していない時期でした。

もし村上さんの本を読んでなかったら、小説も書かないし、日本語もここまで習えないのだと思うと同時に、人生は必ずどこかで「きっかけ」みたいなものがあって、たまたまそのきっかけは村上さんが書いた物語だと感じます。

今まで村上さんのすべての長編とほぼ七割の短編を読んできましたが、一番好きなのはあいかわらず『羊をめぐる冒険』です。

正直に言うと、最近の何冊か(『1Q84』以来の)に対する気持ちがちょっと複雑です。

でも、自分も書き続けている人間として、作家は自分の作品に変化を要求していることはわかっています。村上さんもいつまでも『羊をめぐる冒険』にとどまることは不可能です。たぶん、自分もかなり若い年でそれを読んだゆえ、その気持ちが心に焼き付けられています。

十五年以上、物語を通して知り合いつつ、これからも特に言いたいことはないような感じです。どうぞご健康で、好きな作品を好きなだけ書き続けるように。
(黙音〈Moyin〉、女性、33歳、編集者・小説家)

僕自身は自分がどんどん変化していくのが自然なことだと思っていますので、もしあなたが最近の僕の小説にあまりのめり込めなくても、それはまあ仕方ないことだろうと思っています。僕が小説に求めているものと、あなたが小説に求めているものが、いつもいつもぴたりと合致するとは限りませんから。でもまたどこかで、巡り巡って、僕らの抱く考えはうまく合致するかもしれません。

僕は(いつも言っていることですが)自分が次に書くものにしか興味が向かわないし、過去に書いたものについてはほとんど興味を持っていません。以前にどんなことを書いたかも、どんどん忘れていきます。小説を書くというのはそういうことなんです。元気な生き物をいつも追い続けているようなものです。後ろを振り向いているとその姿を見失ってしまいます。いつも前を向いていなくてはなりません。ご理解ください。

村上春樹拝