大学町で会っても素知らぬふりをしました

2005年頃、村山さんがハーバードで研究員をされていた頃、Cambridgeで近所に住んでおり、走っているところ、ハーバードスクエア、電車の同じ車両、MITの廊下ですれ違ったことが何度かありました。私は心の中で「村上さんだ」と思ったものの、見ず知らずの者が話しかけるのも大変ご迷惑と思い、いつも素知らぬふりをしておりました。ちなみにその頃は『ノルウェイの森』しか読んだことがなく、その後、エッセイやインタビューを拝見して、半端ない思考力の深さや、独自の考えを貫かれるご姿勢、このサイトでの肩すかしぎりぎりの回答(笑)で、すっかりファンになりました。でも、恐らく今、またどこかですれ違うことがあっても、お声はかけないかと思いますが、村上さんの昔からの大ファンの夫は、そんな私が信じられないと言います。こんなファンをどう思われますか? ともかくも、これからも素敵な作品を書き続けて下さい! (個人的には、エッセイやインタビューなど、村上さんの声がストレートに響くものが実はもっと楽しみですが……)
(ケンブリッ子、女性、51歳、ジャーナリスト)

最初だけ「村山さん」であとは「村上さん」になっています。変則的な間違え方ですね。べつにどうでもいいことなんですが、ちょっと気になりましたので。

僕はあの時期、ハーヴァード大学で研究員をしていたのではなく、「writer in residence」みたいなかたちで大学に居候していただけです。ライシャワー・センターでオフィス(私室)をひとつもらって、そこで小説を書いておりました。あとは走ったり、中古レコードを買ったり、ジャズ・クラブにジャズを聴きに行ったり、フェンウェイ球場に野球を観に行ったり。ときどき大学のクラスに出て話をしていましたが。そうですか、知らないうちに街ですれ違っていたんですね。ところですれ違ったときに、僕の尻尾はごらんになりましたでしょうか? 自慢の尻尾なんですが。

村上春樹拝