ラドフォード監督からの映画化の話

こんにちは。今ネットで見たのですが、マイケル・ラドフォード監督に『国境の南、太陽の西』の映画化を打診したという話、本当ですか。すごく意外な感じがしました。村上さんからそういうことはしないと思っていたので……。もし本当なら、どういった映画にしたかったのか教えてください。
私の乏しい想像力では思いもつかないことが映画や舞台では見られるし、違った解釈も知ることができるので、いつか実現してもらえたら嬉しいです。
村上さんにタイムリーな質問ができるなんてすごいですね。
(クララ、女性、47歳、パート)

はっきり申しあげまして、僕の方からラドフォードさんに映画化の打診をしたことはありません。こういってはなんですが、僕はそこまで自作の映画化に積極的ではありません。僕のニューヨークのエージェントから「ラドフォード監督が『国境の南』の映画化を希望しているけれど、どうするか?」という話があったので、面白いかもしれないと思って、ラドフォードさんが日本に来たときに会って話をしました。青山の鮨屋で二人で話しました(このときの会話はなかなか面白かったんだけど、映画には関係ないのでここでは紹介しません)。それで仮契約みたいなものを結び、あちらが脚本を書いて話を進めるということだったのですが、企画は途中で流れてしまったみたいです。いずれにせよ僕の方から企画を持ちかけたわけではありません。そのニュースはおそらく何かの誤解に基づいているか、あるいは一方的な情報に基づいていると思います。うちの事務所に問い合わせてもらえれば、正確な情報を差し上げられたはずなのですが。

映画の世界って、魑魅魍魎だらけというか、とにかくややこしいことが多いんです。多額のお金が絡んできますし、あいだにいろんな人が入ってきますから、話があちこち錯綜して、すったもんだの末に面白くない結果に終わることが少なくありません。だからこそ僕としては、映画関係の話には積極的には関わらないようにしているわけですが。

村上春樹拝