スコアボードは振り返らない

私は韓国人で大学院で村上さんの作品について研究をしました。今はただの社会人ですけどこの頃はとても面白かったと思います。韓国でも約30編以上の村上さんの作品に関する修士の論文と博士の論文まで出たこと、もしかして知ってますか? 韓国の村上さんの作品の研究者の論文を読んだことはありますか? (先生の論文ではありませんで、学生の論文)
私は村上さんの作品の中でも『海辺のカフカ』が大好きで大学院まで進学して研究をしたことをずっとわすれないです。私には一番幸せな時間でした。自ら‘春樹の子供’と言いますように村上さんの作品に多い影響を受けました。
村上さんにはいつも感謝しています。
(Moon、女性、33歳、編集者)

そうですか。僕の本について、そんなにたくさんの論文が書かれているんだ。まだ読んだことはありません。どのような言語で書かれていても、僕は自分について書かれた文章をできるだけ読まないようにつとめています。僕の仕事はテキストを提供することであって、それがどのように扱われてもしかたないと思っているからです。いったんテキストを世の中に送り出してしまったら、基本的にあとのことは知らないという姿勢で生きています。それよりは次の作品のことを考えます。自分の作品が社会的にどのように評価されても、気にしないようにしています。ヘミングウェイは自分を野球のピッチャーにたとえ、試合中はスコアボードは振り返らないと言っています。僕もなるべくスコアボードは見ないようにつとめて生きています。

村上春樹拝