これから「核発電所」と呼びませんか?

1999年文庫本化された『村上朝日堂はいかにして鍛えられたか』。この中で村上さんは、「原発ではないほかの発電技術を開発することが経済大国としての日本だ。一時、経済は衰退するかもしれないが、原発のない国として尊敬される」というようなことを書かれていました。
私は、これを読んだとき、深く感動しました。そして、いつの日か、原発のない、今で言うところの再生可能エネルギーや蓄電技術の発達で、安定かつ本当の意味でのクリーンなエネルギーが作れるものと思いました。
カタルーニャでのスピーチでは、原発事故について、「日本人は核について『ノー』というべきだった」とおっしゃっています。村上さんは、この点について、その後、どのようにお考えですか? 
(ほんだらかんだら、女性、54歳、市民講座講師)

そうか、あの本にそんなことを書いていましたっけ。でもいずれにせよ、原発(核発電所)に対する僕の個人の考えは、当時から今まで一貫してまったく変化していません。

僕に言わせていただければ、あれは本来は「原子力発電所」ではなく「核発電所」です。nuclear=核、atomic power=原子力です。ですからnuclear plantは当然「核発電所」と呼ばれるべきなのです。そういう名称の微妙な言い換えからして、危険性を国民の目からなんとかそらせようという国の意図が、最初から見えているようです。「核」というのはおっかない感じがするから、「原子力」にしておけ。その方が平和利用っぽいだろう、みたいな。そして過疎の(比較的貧しい)地域に電力会社が巨額の金を注ぎ込み、国家が政治力を行使し、その狭い地域だけの合意をもとに核発電所を一方的につくってしまった(本当はもっと広い範囲での住民合意が必要なはずなのに)。そしてその結果、今回の福島のような、国家の基幹を揺るがすような大災害が起こってしまったのです。

これから「原子力発電所」ではなく、「核発電所」と呼びませんか? その方が、それに反対する人々の主張もより明確になると思うのですが。それが僕からのささやかな提案です。

村上春樹拝