小説を書くのは苦しくつらいことですか

私の周りには趣味で小説を書いている人が結構います。
彼らはだいたい会社勤めなんかをしながら、睡眠時間を削って、食事もろくにとらず、一生懸命自分の定めた締め切りにむかって書いてます。
それで、Twitterではブツブツと愚痴を呟きまくってます。
「疲れた」とか「眠い」とか「もう書きたくない」とか。
皆が皆あまりにひどいので、そんなに苦しいならやめちまえよ、仕事じゃないんだからとか思ってしまいます。
春樹さんは苦しんで小説を書かれているイメージがまったくないのですが、そういう大変な思いをして作品を書かれている方のことをどう思われますか? 
それとも私が知らないだけで、春樹さんもこっそりTwitterなんかで「めんどくさくなっちゃったなあ。だれか続き書いてよ」とかやってるのかしら。
(水色の弁当箱、女性、25歳)

そうですか、趣味で小説を書いている人が、世の中にはそんなにたくさんいるんだ。知りませんでした。でも小説を書くのって、生きていく上でけっこう有益なことかもしれませんね。書いているうちに、自分についてのいろんなことがわかってくるし。

僕は小説を書いているときは苦しいか? うーん、あまり苦しいことってないですね。僕がこれまで経験してきた他の仕事に比べたら、小説を書くなんてどちらかといえば楽なものです。通勤もないし、会議もないし、上役もいないし、新年会もないし、愚痴なんか言っているとばちがあたりそうです。

僕は基本的に書きたいと思うから小説を書いているのであって、「書かなくちゃいけない」と思って書いているわけではありません。その二つのあいだには大きな差があると思います。みんな「小説家は苦悩し、呻吟するものだ」みたいな暗い思い込みがあるんじゃないですかね。

村上春樹拝