エルサレム賞を受賞するという決断

村上さんはエルサレム賞の受賞スピーチで、あえてイスラエルのガザ攻撃を否定する発言をされたり、昨年はカタルーニャ賞受賞スピーチで日本の原発依存システムと核を否定しましたよね。私個人としてはスピーチの内容には心から共感しました。そしてそれ以上に、固く大きな壁に立ち向かう村上さんの姿勢に感動し勇気をもらいました。お聞きしたいのは、半端じゃない周囲からの圧力を受けたり、色々な気持ちもあったと思うのですが、あれらのスピーチを行った後、自分の中の何かが変わったと思うことはありますか? 
(えかきうたのコック、女性、43歳、コック)

イスラエルでのスピーチに関しては、現地の反応は複雑でした。ひとことでは言えませんが、イスラエル側はメディアはおおむね「聞きたくない部分は聞かなかった」という姿勢だったかもしれません。カタルーニャにも原子炉は何基かありますので、セレモニーに同席していたカタルーニャの首長はわりに暗い顔をしていました。何かを主張すれば、必ず誰かが面白くない思いをします。こればかりはしょうがないです。

でも僕がいちばん意外だったのは、僕がエルサレム賞を受けにイスラエルに行くことを、日本の某新聞に「イスラエルに迎合している」と批判されたことでした。どうして何も確かめないで、こちらの真意も確かめないで、人をそんな風に安易に批判できるのだろう? 僕だって考えに考えた末に、腹をくくって賞を受けることを決断したのです。僕にとっては外国のメディアの反応よりも、そういう日本のメディアの反応がずっとショックだったですね。背中から弾丸が飛んでくるみたいな。

村上春樹拝