翻訳で気になった所がありまして

今『高い窓』の最後の部分を読んでいるのですが、P.311の「そしてその蝋でできたものを、今度はクリストボライトという別の種類のセメントに注ぎ込む」にひっかかって、「?」となっています。注ぎ込むということはせっかく造った蝋で出来たレプリカが液状の蝋に戻っているのでは、と考えてしまいます。むしろ蝋で造ったレプリカにクリストボライトを注いで複製のための型を造った、と考えたほうが良いのではと思いました。
変な話ですが私は本や書類を読んでいて、あれ? となることがあります。普段はしばらくそこで立ち止まり、何度か繰り返し読み返します。読み返すと私の読み間違いが多いのですが、何度読み返しても釈然としない時もあります。
だからといって著者や出版社に手紙を書いたりはしません。みんな忙しいし、私の読み方に勘違いがあるのかもしれないし、本筋には関係ないし、めんどくさいですし。ただ今回はこのような機会を設けてくださっているので、つい我慢できなくて書いてしまいました。僭越な振る舞いで申し訳ありません。
このメールを送信したら続きを読みます。あと少しです。
(うどん県民、男性、64歳、無職)

ご指摘ありがとうございました。原文は

……, then investing the wax, as they call it, in another kind of cement, ….

です。この部分を正確に訳すと

「そしてその蝋でできたものを、今度はクリストボライトという別の種類のセメントで外被するわけだ。専門用語を使わせてもらえば」

となります。investというのは金属加工の専門用語で「外被する」ということみたいです(大きな辞書にしかこの意味は載っていません)。だからマーロウはあえて, as they call it,と断っているわけですね。たしかに僕の訳し方が雑でした。, as they call it,という一言の存在意味をもっと深く追求するべきでした。次の版で訂正しておきます。すみません。金属加工のテクニカルな(幾分退屈な)説明が長く続くので、僕もちょっとぼんやりしていたのかも。

村上春樹拝