アーティストの政治的発言を考える

村上さんはアーティストの政治的発言についてどう思いますか? 
アーティストが政治的発言を始めると創作がつまらなくなるように感じます。
その理由を考えてみたんですが、アーティストというのはもともと政治に興味がない人種であって、心の奥のほうでは本来「他人のことはどうでもいい」人種なんじゃないでしょうか。
(K.O.、男性、42歳、建築家)

「アーティストというのはもともと政治に興味がない人種であって」というあなたの意見は、いささか一面的に過ぎるのではないかと僕は(僭越ながら)思います。そういう人もいるでしょうが、そうじゃない人もいます。アメリカの歌手や俳優の多くは政治色を鮮明にしていますよね。アーティストもやはり社会の中に生きている人間ですし、彼らの作品と彼らの政治的姿勢が切り離せないという場合も多々あります。人それぞれです。

ただその一方で、「アーティストが政治的発言を始めると創作がつまらなくなる」というあなたの意見には、部分的に(あくまで部分的にですが)「そうかもしれない」と思わされるものがあります。どちらかといえばロジカルなアプローチを排した創作活動をしているアーティストが、政治的にロジカルな発言をするようになると、意識性と無意識性の錯綜が軽いクラッシュを起こす場合があります。このへんの兼ね合いはとてもむずかしいです。自分の立ち位置や視点をきちんと分離できれば問題はないのですが。

いずれにせよ、人はどれだけ政治を避けようとしても、必ず何らかのかたちで政治に巻き込まれていくものです。それと正面から向き合う姿勢は、すべての人が常々しっかり準備していなくてはならないものだと、僕は基本的に考えています。アーティストに限らず、誰であれ。

村上春樹拝