死が怖くて仕方ありません

僕は20年前に村上さんの作品に出会って、それからはもうすっかり村上さんの虜になっています。村上さんの書いたものはもちろん、村上さんが名前を挙げた作家の作品もほとんど繰り返し読んでいます。大胆不敵なことに十数年前、「よし、それじゃあ僕も」と自分でも小説を書き始め、何度か文学賞もいただきました。
そんな崇拝する? 村上さんにお話できる機会があるなんて考えもしませんでしたが、可能であればひとつだけ聞いてください。
村上さんは作品の中で「死は生の対極としてではなく、その一部として存在する」とおっしゃっています。そのことは自分なりに理解できるような気がしています。でも僕はとても恥ずかしいのですが、死に対しては絶望的な恐怖心を持っています。怖くて怖くて仕方ないのです。
村上さん、どうしたら人は(僕は)その恐怖を乗り越えられるのでしょうか。
たとえヒントのようなものでも、救いの言葉をいただけたらと願っています。
あまり楽しい質問でないことをお詫びします。
最後に、これからもずっと村上さんの作品を楽しみにしています。
(古川サト、男性、60歳、団体職員)

何度か文学賞もとっている、なんてすごいですねえ。素晴らしいです。がんばって書き続けてください。

人が死への恐怖心を持つというのは、まあ当然のことなのだと思います。ただ僕はあまり想像力がないのか、日常生活の中で死について考えるということがほとんどありません。たまに考えますが、「ま、いいか」と思って適当に切り上げます。それよりは今できることをちゃんとやっておこうと。先のことは先のことだし(といっても明日のことかもしれないのですが)、先になって考えればいいんじゃないかと。

ただ小説を書いている中で死に近接することはあります。暗い深い世界にあっては、生と死とは部分的に重なり合っています。僕にとっての死という観念は、むしろそっちの世界にあるのかもしれません。現実の生活にではなく。

村上春樹拝