小説家になるのは総力戦

村上さん初めまして。
さっそくですが、質問があります。
僕には小説家になるという夢があり、ここ最近は掌編小説を何作か書いています。
村上さんは小説家としてデビューできるまでに小説を書いたりといったことをしていたのでしょうか。
小説家を目指そうというきっかけを作ってくれた村上さんにぜひ聞きたいことです。
村上さんの今後のご活躍をお祈りします。
(匿名希望、男性、20歳、会社員)

デビューするまで、ずっと生きることに忙しかったので、小説を書く暇なんてありませんでした。ちょっと暇ができたかなと思ったので、小説(みたいなもの)を書きました。書くことも大事ですが、きちんと生きておくこともかなり大事ですよ。あとになってそういう「貯め」が意外に役に立ちます。「貯め」がなければ、その時はうまくいっても、やがて萎(しお)れてしまいます。小説家になるというのはいわば総力戦なんです。武器弾薬をたくさん貯め込んでおくことは大事ですよ。

村上春樹拝