海外文学をがりがりと

村上さんが小学校の頃、国語の先生だったご両親に日本文学を読むように強制されて、反発して世界文学全集をほとんど読破したとどこかに書いてありました。これって本当ですか? それとも都市伝説ですか? 
(過負荷、男性、55歳、医師)

基本的に正しいですが、細部にいくつか訂正箇所があります。うちの父親は国語の教師でしたが、母親は結婚した時点で教職を辞し、専業主婦になっておりました。母親は大阪の樟蔭女子専門学校国文科を卒業し(田辺聖子さんの少し先輩にあたるみたいです)、母校である樟蔭高等女学校で、戦争中に国文を教えておりましたが、昭和24年の始めに僕を生みました。父親は(途中で兵隊にとられながら)京都の大学の大学院でずっと国文学を研究していたので、うちにはその関係の書物がずいぶんたくさんありました。というわけで、家の中がなんかやたら国文学っぽかったわけです。どっちもなんか学問が好きで。それが鬱陶しくて、僕は日本文学には背を向け、海外文学をがりがりと読みあさることになりました。日本の小説ってほとんど読まなかったし、学問もあまり好きにはなれませんでした。親とはおおむね逆のことをやって生きてきたみたいです。よくあるパターンですが。

村上春樹拝