なぜ今もドストエフスキーなのか?

多くの日本人(作家、評論家含めて)はなぜドストエフスキーに惹かれるのでしょうか? トルストイやツルゲーネフじゃなぜダメなんですか? 
(ドストエフスキー、男性、55歳、医師)

僕はトルストイもツルゲーネフも好きで、よく読みました。でも現代という時代から見ると、ドストエフスキーの小説が持つ「同時代性」は圧倒的に傑出しています。現代の読者はドストエフスキーの小説を、「有名な古典小説だから読む」というよりは、むしろ今ここにある問題へのアクチュアルな回答(あるいは回答の示唆)を求めて読んでいるような気がします。フランツ・カフカの場合もそれは同じことです。彼らの抱えていた問題意識が、時代を超えて現代にまでしっかり通じているのだと思います。もちろんそれでトルストイやツルゲーネフの作品の価値が落ちるというわけではありません。少しべつのところに属しているものなのだ、ということです。それは日本のみならず、世界中で見られる現象です。

村上春樹拝