ふっとこころが軽くなる一言

こんにちは。村上さんの本はずっと読み続けており、読むたびに「自分は本を読むのが好きでよかったなあ」と思っています。

さて、私は昨年夏に初めての赤ちゃんを出産しましたが、赤ちゃんはダウン症でした。人生なにが起こるか本当にわからないものだとなかなか落ち込みましたが、すこしずつ折り合いをつけ、赤ちゃんと夫と楽しく暮らしつつあります。

とはいえ、時おりこの先を考えてまっ黒な不安に襲われます。そんな時、なにかふっとこころが軽くなる一言をいただけると幸いです。
(さくらの豆大福、女性、41歳、産休中の編集者)

いつも僕の本を読んでいただいて、ありがとうございます。心が軽くなるようなひとこと、と言われると、僕としてもなんだか緊張してしまいます。僕らは言葉を扱うのが仕事なのですが、そういう実効性のある言葉って、そう簡単には出てきません。だいたい言葉ひとつで片付くようなことなら、あなただってそんなに深く考え込んだりはしませんよね。時間をかけて、前に進んだり後ろにちょっと下がったりしながら、ここまでやって来られたのだと思います。まわりと引き比べて、落ち込まれたようなこともきっとあると思います。そこにある生命を、どうかあなた自身の生命だと思って、大事にしてあげてください。それはあなたにしかできないことなのだから。先のことは先になって考えればいいじゃないですか。今という時間がなによりたいせつです。今という時間は今しかないんだから。そう思いますよ。

村上春樹拝