こんな不思議なことがあるんですね

村上さん、こんにちは。
今日、驚くことがありました。
友人の話を聞き終わったあと、留学生活に唯一持ってきていた『東京奇譚集』を読み返しました。

仲の良い友人の話です。彼女には、特別な能力はありません。ただあるときから、毎日毎日夢の中で見る置物があったそうです。それはチェロとその脇に小さな時計が寄り添っている置物。不思議に思い、ある日その夢の中に現れる置物を紙に描き、そっと机の引き出しにしまっておいたそうです。

そして今日、彼女は何故か急に思い立ち、彼女の好きな男の子にその絵を見せました。すると彼に、なんで君がこれを知っているんだ、と驚かれたそうです。
実はその絵に描いてあった置物は、昨年亡くなった彼の弟が、数年前の彼のお誕生日にプレゼントしてくれた置物と全く同じものだったとのこと。
ちなみに置物は、彼の実家の奥底に眠っており、彼女は見るよしも知るよしもないそうです。
私が見せてもらった彼の置物の写真と彼女が描いた絵は、チェロの脇にちょこんと佇む時計の針が指す、9時40分という時間までぴったり同じでした。

こんなことってあるんですね。この出来事を経て、二人がこの後どういう関係になっていくのかは分かりませんが、間近で二人のことをよく知る私もドキッとして、村上さんに話したくなってしまいました。
私も昼間にあがる花火に気付けるような人間でありたいです。
(じぇーぶしゅか、女性、20歳、学生)

ふううん、とても不思議な話ですね。そのまま短編小説の土台になってしまいそうです。『東京奇譚集』は(ほとんど)すべてフィクションですが、最初のトミー・フラナガンの話と、レコード屋さんの話だけは本当にあったことです。僕の人生にもときどき(ちょっと)奇妙なことが起こります。そのあなたの話のようにとんでもなく不思議なことは起こったことがありませんが。

村上春樹拝