性描写のシーンでつらくなります

村上さんはセックス経験のない男性をどう思われますか? 
僕は30代後半でありながらセックスしたことがありません。
村上さんのエッセイにはセックスの話題がたくさん出てきますし、村上さんの作品の主役はセックスをしていない人はまずいません。
村上さんと村上さんの作品の登場人物から「物語作家として言わせてもらえば(物語の登場人物としていわせてもらえば)いい年齢した男がセックスもしていないなんて『お話にならない』」と思われているようで、村上さんの作品の性描写のシーンはいつもつらくなります。作品を読んで、音楽を聴きたくなったり食べ物を食べたくなったりはするけれど、セックスはしたいとは思わないのです。

やはり僕は村上さんや村上さんの作品の人物から軽蔑されるような人間なのでしょうか。
(かんぱち、男性、36歳、小売業)

性欲や性のとらえ方に関しては、個人によって大きな差があります。性欲がとても強い人もいれば、弱いというか、淡泊な方もおられます。僕は小説家として性というものを、魂と魂を結びつける通路のひとつとして捉え、そのように描いています。しかしもちろん性だけがその通路ではありません。ほかにいろんな通路があります。というか、性はその通路のひとつのメタファーに過ぎないかもしれません。そのように考えていただけると、僕としては嬉しいです。

僕はどちらかというと、性に関してはオープンな方だと思います。そのような姿勢、というか考え方があなたの感情を傷つけているのだとしたら、それは申し訳なく思います。もちろんそんなことであなたを軽蔑したりはしません。すべての読者の個性を認め、尊重するのが小説家の役目です。「村上はこういうやつなんだ。そして僕はこういう人間なんだ」と思って気楽に本を読んでください。人はみんなそれぞれにちょっとずつ違うんです。

村上春樹拝