安西水丸さんとの懐かしき日々

読者との直接交流サイト、再開していただいてありがとうございます。1998年と2006年に2、3度お返事いただきました。ありがとうございました。20年ほど前からの読者です。
このサイトの再開はうれしかったのですが、最初に拝見した率直な感想は、水丸さんのイラストではない寂しさでした。もちろんフジモトマサルさんのイラストも温かくて味わいがあるとは思うのですが、もう水丸さんのイラストを見られないんだなって改めて感じました。

いろいろなところで水丸さんについては語られているとは思いますが、一つ教えてください。水丸さんとの最初の出会いはピーター・キャットだったのですか? その時の水丸さんに対する印象はどのようなものでしたか? どのような経緯で親しくなられたのでしょうか。
(あと2kg減量、男性、43歳、会社員)

水丸さんは僕が小説家としてデビューしたころに、店にときどき見えていたと思います。おうちが店のわりに近くだったので、散歩のついでに寄ったみたいでした。うちの店は、僕が小説家になる前から、なぜか作家や編集者がお客としてよく出入りしていたので(そういえば中上健次さんも村上龍さんもみえたことがありました)、水丸さんと初めて会ったのが作家デビューの前だったかあとだったか、よく覚えていません。でもいずれにせよ、当時水丸さんはまだ平凡社の社員で、あくまで副業でイラストを描いておられました。

僕は嵐山光三郎さんと水丸さんと糸井重里さんが一緒にやっていた、雑誌『宝島』の「チューサン階級ノトモ」が大好きで、以前から水丸さんのファンでもあったので、わりにすぐ仲良くなりました。その少しあとで水丸さんは会社を辞め、独立してイラストレーターになりました。「社長に辞表を出してさ、『お世話になりました』って頭を下げて、ちょっと言い忘れたことがあって戻ろうとしたら、社長があとずさりして辞表をさっと隠すんだよね。きっと取り返しにきたかと思ったんだね」と笑っておられました。慰留はまったくされなかったそうです。社長の気持ちもわかるけどな(笑)。

水丸さんについてはとんでもない話がほんとにいっぱいあるのですが、残念ながらここにはとても書けません。

村上春樹拝