スペッツェス島再訪

今から約20年前、大学の卒業旅行に『遠い太鼓』を片手にスペッツェス島に行きました。島に着いた途端「何しに来たんだ」と質問攻めにあったので貴書を示し「ここにこの島の事が書いてあるんだよ」と説明しました。
私はいま、あの頃の春樹さんに近い年になりました。今年、本当に自分がやりたい仕事に就きたくて、自分史上恐らく最大の冒険に出るんじゃないかと思っています。40歳前後のご自身を顧みて、何か一言頂けると嬉しいです。宜しくお願いします。
(shinsou美和、女性、41歳、ライター・英会話スクールアシスタント)

そうなんです。わざわざスペッツェスに行く日本人ってあまりいません。ほんとに何もないところだから。でもいいですよね、のんびりしていて。僕はこのあいだ久しぶりにスペッツェスを再訪しました。昔住んでいたあたりをぶらぶら散歩しました。今年の秋に出る旅行記にその文章が載っています。よかったら読んでみてください。なんか本の宣伝をしているみたいで心苦しいんですが。

僕が40歳になった頃は『ノルウェイの森』騒ぎの後遺症でけっこうくたびれていたような気がします。年譜を見ると(僕の年譜があるので便利です)、前年に『ダンス・ダンス・ダンス』を出版しています。その年にはカーヴァーの『ささやかだけれど、役にたつこと』とティム・オブライエン『ニュークリア・エイジ』の翻訳を出しています。ほかにもいろんなことがあって、考えてみたら、僕がいちばん疲れていた時期かもしれませんね。40歳ってやはりひとつの曲がり角みたいです。あなたの挑戦がうまく行くことを祈っています。

村上春樹拝