女性と男性では創作に違いがありますか?

はじめまして。
村上さんの小説が大好きです。
私は、オペラの稽古でピアノを弾く仕事をしています。
好きな作曲家はシューベルトです。「楽興の時」が一番好きです。
小さい頃からピアノを弾いてきましたが、あまり練習が好きではありませんでした。17の時に出会った先生に触発を受け、今では音楽なくして人生なし、と思うくらいです。
作曲に興味がありますが、一度も書いたことがありません。
村上さんは、ある日思い立って『風の歌を聴け』を書いた、とおっしゃっていたと思うのですが、何か具体的なきっかけがあったのでしょうか? 
それと、これも私にとって重要な質問なのですが、女性と男性では創作に違いがありますか? 
女性には辿り着けない男性の領域ってあるのでしょうか? 
村上さんの小説からは、私にとっての音楽的なもの(時間?)をとても感じます。
(ばんり、女性、27歳、ピアニスト・コレペティトール)

そういえば小澤征爾さんも若い頃、ウィーンでオペラの練習のピアノ弾きをしていたとおっしゃっていました。ミレッラ・フレーニとニコライ・ギャウロフの練習の伴奏をしていたということです。そして目の前で二人がどんどん親密になっていくのを目撃していた(そしてやがて結婚する。両方とも既婚者だったんだけど)。そのようにして三人はとても親しい友だちになったということでした。

男と女とで創作の方法に違いがあるとは僕には思えません。ただ僕は自分のことをわりに特殊な例だと思っています。習作も何もなく、とくに具体的なきっかけというほどのものもなく、ぽっと小説を書いて、そのまま作家になってしまいました。これはもう運命としか言いようがないような気がします。運命って大切です。ほんのちらりとしか目に出来ませんので、運命が通りかかったときに見逃さないようにすることが大事です。女性には辿り着けない男性の領域ってあるか? たぶんないと思います。

村上春樹拝