人生って意外なことばかり起きますね

カフカくんのサイトの際は、村上さんに直接質問メールを読んで頂けると言うことで、舞い上がった挙げ句、まったく本意ではない質問をしてしまい、それ以来後悔の日々を送って参りました。どうか、私に再びのチャンスを! 

と言っても、後悔の日々に反省した結果、私は村上さんのことが好きすぎて、結局今回も同じ轍を踏んでしまうであろうことが推測されるので、質問は止めます。

カフカくんが四国まで旅をしたあの頃は、私の人生にとってもなかなかハードな時期でした。それ以来色々ありまして、今は歯科医師の夫と結婚し、そこそこ穏やかに暮らしております。夫は非村上主義者ですが(小説というもの無しで生きていけるタイプの人間なのです)、アルコールはこよなく愛しているタイプの人で、先日私が旅行中に読んでいた『もし僕らのことばがウィスキーであったなら』に反応し、結婚して10年、初めて「面白そうな本だから貸して」と言われ、小確幸でした。

私の人生って、本当に欲していたものは手に入らず、気が付けば意外なものばかりに囲まれて暮らしているような気がします。村上さんもこんな風に感じることは、ありますか? 

また結局質問してしまいました。
(歯科医妻、女性、39歳、主婦猫)

そうですね。人生って考えてみれば不思議なものですよね。僕の人生も本当に意外なことばかりです。ときどき「なんで僕はこんなところでこんなことをしているんだろう?」とびっくりしてしまうことがあります。たとえば二十四歳の僕が誰かに「きみはゆくゆく有名な作家になって、ロンドンでサイン会をすることになるよ」なんて言われたら、きっと笑い飛ばしていたと思います。小説を書くことさえ信じられなかったでしょうね。そんな才能は自分にはないと思っていたから。

でもなんのかんのあって結局は小説家になり、こうやって今、見ず知らずのあなたとお話ししている(というかメッセージの交換をしているわけですが)。考えてみれば不思議なものですね。すべてはあてもないうたかたの夢みたいなものかもしれません。でもまあお互いがんばって、やっていけるところまでやっていきましょう。

村上春樹拝