小説のモデルを名乗る人!?

こんにちは。村上さんは一人っ子でよかったなと思いますか。私も一人っ子で、大人になった今はなんでも一人で決められるので楽だなと思います。そのかわりに人に頼ったり甘えたりするのが苦手です。それに一人っ子ですと言うと少し特別視されるような気がしていました。大好きな『国境の南』で一人っ子にこだわりを持たれていたので同志を得たような気がして嬉しかったです。そういえば、季語と言ってもいいようなノーベル賞の発表前に、『国境の南』のはじめ君のモデルかもしれないという同級生の方がテレビに出られていました。本当ですか。とてもナイスガイな方でした。
ペンネームください。お願いします。
(クララ、女性、47歳、パート)

そんなことがあったのですか。はっきり申し上げまして、僕の小説にはモデルはいません。とくにモデルみたいなものを必要とはしないからです。もし「私がモデルです」と名乗り出る人がいたとしたら、そこにはおそらく何かしらの誤解があるはずです。テレビ番組が提供しているその手の情報の多くはほとんどがデタラメ……とまでは言いませんが、かなり真実からかけ離れていることが多いようです。少なくともしっかり裏はとられていません。あまり頭から信用なさらない方がいいと思いますよ。僕もこれまでにけっこう多くの迷惑をこうむり、あまり面白くない目にあってきました。名前も聞いたことのない(あるいは覚えてもいない)人が友だちになっていたりすることもあります。

村上春樹拝