本や映画を評価するときのスタンスは?

本や映画、音楽など他人の評価に左右されずに自分の評価を下すということは簡単なことではないように思えます。村上さんはそれらの作品を手に取った時どのように接しようとしていますか? 作品について考える時の村上さんの姿勢、スタンスのようなものがあれば教えてください。
(九十松、男性、24歳、大学院生)

僕はできるだけ書評とか映画評のたぐいは読まないようにしています。ベイシックな情報だけを仕入れます。僕も昔は書評とか映画評を少し書いていたことがあって、それがときとしてけっこういい加減なものになってしまうことを、身にしみて知っているからです(だからこそ自戒して、そういうものを書くのをなるべく控えるようにしてきたのです)。もちろん中には頭を下げたくなるような立派な評もありますが、どちらかといえば、そういうものよりはそうではないものの方が多いかもしれない。風向きをはかって、「これをこんな風に書いておいたら、人は感心してくれるだろう」みたいな姿勢で書かれているものがけっこうあるみたいに感じませんか?

まずご自分の嗅覚で本や映画を選び、自分の感覚でそれを評価する習慣をつけられるといいと思います。あまり他人の意見をあてにしていると、やがて痛い目にあうことになります。嗅覚を磨くことはとても大事です。野球場に行ったらスコアボードではなく、試合そのものをじっくり見ましょう。それと同じことです。

村上春樹拝