不思議なエピソードが降りてくる

村上さん、こんにちは。
『村上ラヂオ』をひさしぶりに読んでいたら、エッセイ「食堂車があればいいのに」のところでちょっと驚きました。村上さんが「世の中にもう食堂車なんて見かけなくなっちゃったから」没にした話のなかに「アルコール漬けの指」のエピソードが出てきたからです。再読するまですっかり忘れていました。
『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の中にも、印象的なエピソードとして出てきますよね(こちらはホルマリン漬け)。
これは、いつか使おうと思っていて『多崎つくる』に出番を作られたのでしょうか? 
それとも、『多崎つくる』の話が村上さんに降りてきたとき自然とそこにあったものなのでしょうか? 
自分は後者のような気がします。
「アルコール漬けの指」不思議なエピソードですよね。もとはどんな話だったのか知りたいです。
(なお、男性、55歳、自営業)

そういえばそんなことを書いたっけな、すっかり忘れていました。たしかに僕はずっと昔「アルコール漬けの指」の話を書こうとしたんだけど、うまい使い場所がなくてそのままになっていて、そのことを『多崎つくる』を書いているときに思い出して、使いました。やっと使えてほっとしました。そんな風にひっかかったままになっているエピソードというか、情景みたいなものは、僕の中にいくつかあります。

村上春樹拝