創作活動と走ることをどう切り替える?

村上春樹様
高校生のときに『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を拝読して以来、新たな作品が出るのが楽しみでなりません。

長編小説をお書きになるときに、その世界観を構築しながら、その世界の中にまるで入り込むような精神活動というのは、きっと大変な作業なんだろうな、と勝手に想像しています。

村上様がジョギングを日々行われていることはファンの間でもよく知られていることですが、執筆が進みながら対象となる物語の世界にうまく入り込めているときなど、ジョギングすることにより、せっかくの勢いがそがれるというか、心身がリセットされてしまうことによるデメリットのようなものはあるのでしょうか?
また、ジョギングすることにより、むしろ世界に入り込んで継続的に執筆ができるメリットとしては体力面があるだろうなと思っていますが、その他メリットについて伺えればと思っています。

執筆活動とトレーニングとの折り合いについてどのように処理されているのか前から是非伺いたいと思っていました。どうぞよろしくお願いいたします。
(Ken、男性、43歳)

ものを書く、あるいはなんらかのかたちで創作活動をおこなうときに、大切になってくるのは、創作意識を自由にオンにしたりオフにしたりできる能力です。この能力がないと、意識のフェイズが入り乱れて、日常生活が乱されたり、創作意欲が削がれたりします。僕の場合はこのオンとオフとの切り替えがかなりはっきりしており、それはとてもありがたいことです。机の前を離れると意識をオフにして、ただ無心に走ります。そして頭を休め、肉体をすっきりとさせ、気分転換をします。机の前に戻ると、再び意識をオンにします。そしてすぐに仕事の続きに取りかかれます。

これは僕に特別に備わっている能力なのか、それとも創作者が多かれ少なかれ一般的に持っている能力なのか、それは僕にはわかりません。他の人たちのことはよくわからないので。でもこのオン・オフ機能が備わってないときっと不便だろうな、とは思います。ということでよろしいでしょうか?

村上春樹拝