アメリカ南部からお便りします

村上さん、こんにちは。

夫の仕事の関係で、現在アメリカ南部に住んでいます。学生時代、英語の成績は悪いほうではありませんでしたが、現地での英会話は本当に手ごわいです。

出産直後に日本を離れたため引越しや育児で忙殺され十分な心構えもできず、不安を抱えたままあれよあれよとこちらに来てしまいました。

でも到着してすぐに行った近所の本屋に、村上さんの作品がちゃーんと並んでいたんです。特設コーナーではなく、地元の作家のものと一緒に。

市の図書館にもハードカバーだけでなくオーディオブックがあります(『色彩を持たない多崎つくると……』は日本語版を手に入れる前にオーディオブックで楽しませていただきました)。

ニューヨークでもないボストンでもないこんな場所(わりと田舎です)にも村上さんの読者がいるんだ。そう思うととても心強く、励まされ、温かい気持ちになりました。

同時に、大切な作家がいるということが自身の人生の大事なよりどころとなっていることに気づかされました。自分はとても幸せ者です。村上さん、本当にありがとうございます。

今年3回目のお正月をこちらで過ごしました。いつか村上さんの読者の方に出会えたらいいなぁと思っています。

では、お体に気をつけてお過ごしください。このような機会を作ってくださり、本当にありがとうございました。


追伸:アメリカという大きな国で、『壁と卵』の受賞スピーチを読むと、いろんなことがとても怖くなります。
(アメキオ、女性、41歳、主婦)

南部のどのあたりにお住まいなのでしょう。僕はゼルダ・フィッツジェラルドのことを書くために、アラバマ州モンゴメリーにしばらく滞在したことがあります。とても興味深い土地柄でした。それからメキシコからニュージャージーまで車で移動するとき、南部のいろんな場所を抜けました。東部から行くと、独特の風土がありますよね。僕が個人的に好きな街はサウス・カロライナ州のチャールストンでした。南部の食べ物って、とてもおいしいですね。どうかお元気でお過ごしください。

村上春樹拝