河合隼雄先生の洞察力

なぜ村上作品にこれほどまでに心を鷲掴みにされてしまうのか? その理由も分からぬまま、25年以上何度も何度も作品を読み返してきました。読めば読むほど物語が心に突き刺さり揺さぶられる。しかし何故、たかが物語がこんなに俺の心をムチャクチャに揺すってくるんやろ? と不思議で仕方なかったのです。

そんな時に読んだ『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』(新潮文庫)は衝撃でした。河合先生が誰にでも分かるような平易な言葉で、これほど長きに亘って疑問に思っていた「心の揺さぶり」の正体を、いとも簡単に説明してしまったからです。やられた、と思いました。そうか、これだったのか、と。

河合隼雄さんが、もうこの世におられない。そう思いますと、本当に本当に心が悲しいのです。
(さらさら、男性、43歳、不動産投資業)

河合先生はどこまでも深い洞察力を持っておられた方でした。頭の切れる人は世の中にけっこうたくさんいますが、あれほど深い洞察力を具えた人はほんのわずかしかいません。頭が良いだけの人って、見ていてわりに疲れますよね。河合先生に会ってしばらく話をしていると、自分の中に溜まったそういう「疲れ」みたいなのがだんだん癒やされていくのがわかります。ほんとうに希有な能力を持っておられた方でした。もうお会いできないのはとても残念です。

村上春樹拝